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『多類婚姻譚』感想|凪良ゆうが描く「選ぶこと」と「手放すこと」

本を読む

こんにちは、蝶まめです。

今回紹介するのは、凪良ゆうさんの『多類婚姻譚』です。

📖 読書天気:曇り ☁️
重たい雨が降るわけではないけれど、最後まで気持ちよく晴れきることもない。読み終わったあと、自分がこれまで選んできたものを少し振り返りたくなるような曇り空でした。

タイトルから、いろいろな結婚の形を描いた物語なのだろうとは思っていました。

でも、読んでいて考えたのは「結婚って何だろう」だけではありません。

何かを選ぶこと。
そのために、別の何かを手放すこと。

そして、手に入れてから「本当に一番欲しかったのは、これだったのかな」と迷うこと。

結婚を入り口にしながら、いつの間にか人生の選択そのものを考えていました。

『多類婚姻譚』はこんな人におすすめ

  • 結婚や家族を描いた物語が好きな人
  • 「普通」や「当たり前」に違和感を覚えたことがある人
  • 人生の選択や後悔を描いた作品が好きな人
  • 読後にも考えが残る作品を読みたい人
  • 短編集を少しずつ味わいたい人



結婚しているかどうかに関係なく、どこかで自分のことを振り返りたくなる作品だと思います。

「自分ならどうするだろう」と考えながら読むのも、おもしろい一冊です。


『多類婚姻譚』はどんな本?

結婚とは、誰かと人生を共にすることなのか。

家族になることなのか。
それとも、社会の中で決められた形に自分たちを当てはめていくことなのか。

人と人が関係を結ぶとき、そこには本人たちの思いだけでなく、家族や周囲の価値観、言葉にされない慣習や「普通」が入り込む。

それぞれが望むものを求め、何かを選び、ときには別の何かを手放していく。

さまざまな関係を通して、結婚の形だけではなく、人が誰かと生きること、そして自分の人生を選ぶことを問いかける短編集。

『多類婚姻譚』を読んだ感想

最初の話を読んで、いきなり自分の結婚当時のことを思い出しました。

物語の中の誰かの話を読んでいたはずなのに、気づけば自分の経験と比べていたんです。

ここから、この本は思っていたより自分に近いところへ来るぞ、という感じがしました。

「普通の結婚」って、なんだろう

結婚するときの挨拶や服装、手土産。

今なら「一般的にはこうするよね」と思えることがあります。

でも、実際の結婚って、教科書通りにはいかないんですよね。

私自身、結婚当時を振り返れば、一般的な形とは違っていたことがあります。

そこにはそのときなりの事情があって、自分一人の判断だけで決まったわけでもありません。

外からその場面だけを見れば「普通はこうするでしょう」と言えることでも、その人の置かれていた状況まで見れば、話はまったく違ってくる。

『多類婚姻譚』を読んでいて、そんなことを思い出しました。

「普通はこうする」
「結婚ならこうするもの」

よく聞く言葉だけれど、その普通って誰にとっての普通なんでしょう。

家庭が違えば、育ってきた環境も違う。
世代によって考え方も変わります。

同じ出来事でも、そこに至るまでの事情を知っている人と知らない人では、見え方も違います。

結婚は二人でするもの、と言うけれど、実際にはそれぞれの価値観や事情まで一緒になっていく。

そこが難しいんだろうな、と思います。

何かを手に入れるために、何かを手放す

読み進めながら強く残ったのが、

何かを手に入れるために、何かを手放すことは必然なのかもしれない。

ということでした。

全部を同時に選ぶことはできません。

誰かと一緒に生きることを選べば、一人だったときとまったく同じではいられない。

仕事、家族、安心、自由。

大切にしたいものはいくつもあるのに、いつでもすべてを同じだけ持てるとは限りません。

だから選ぶ。

そのときの自分なりに考えて、欲しいと思ったものを選ぶんですよね。

三話目では泣きました。

単純に「悲しい話だったから」という感じではありません。

何かを選ぶということには、その向こう側に残してくるものもある。

それを考えたら、どうにもならなくなった。

そんな涙だったように思います。

それは、本当に一番欲しかったものだった?

選んだ瞬間には、「これが欲しい」と思っていたはずです。

でも、その先を生きてみたら迷うこともある。

本当に一番欲しかったのは、これだったのかな。

手放したもののほうが、大切だったんじゃないかな。

選ぶ前には、その答えはわかりません。

実際に手に入れてみなければ見えないものもあるし、自分自身だってずっと同じではないからです。

あのとき欲しかったものが、今も一番欲しいものとは限らない。

だから、あとになって迷ったり、後悔したりすることもあるのでしょう。

人生って難しいな、と思います。

未来の自分がどう感じるかまでは、今の自分には決められないんですから。

選ばなかった人生は、もう確かめられない

「あのとき、違うほうを選んでいたら」

人生では何度も考えることがあります。

でも、選ばなかったほうの人生を実際に生きて、比べることはできません。

別の道ならもっと幸せだったかもしれないし、今より大変だったかもしれない。

それは永遠にわからない。

結局、自分が選んだ人生を生きていくしかないんですよね。

『多類婚姻譚』というタイトルから想像していたのは、もっと「さまざまな結婚」を外側から眺めるような物語でした。

ところが読んでみたら、問われていたのは自分のほうだった気がします。

自分は何を選んできたのか。
その選択の先で、何を大切にしてきたのか。

そんなことまで考えることになるとは思っていませんでした。

まとめ|選ぶことと、手放すこと

『多類婚姻譚』は、いろいろな結婚の形を描くだけの短編集ではありませんでした。

誰かと生きること。
自分が欲しいものを選ぶこと。
選ばなかったものを、ときどき振り返ること。

結婚という題材から始まって、気づけばもっと広い「人生」の話になっていました。

きっとこの本は、読む人の立場やこれまでの経験によって、引っかかる場所も変わるのだと思います。

私は、自分が選んできたものを否定したくなったわけではありません。

ただ、その選択の隣には、選ばなかった何かもあったんだよな、と少し考えました。

すっきり答えをもらう本ではなく、自分の中に問いを残していく本かも…