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『正体』感想|自分ならどちら側に立つのか考えてしまう

染井為人『正体』の文字を重ねた、雨上がりの工事現場を歩く人物の後ろ姿 小雨

こんにちは、蝶まめです。

今回紹介するのは、染井為人さんの『正体』。

📖 読書天気:小雨🌦️
晴れたとは言い切れないけれど、降り始めでもない。読み終えたあと、雨が少しずつ上がりかけているような気分でした。

書店で何度も見かけていたのに、なかなか手に取れなかった作品です。

タイトルに惹かれなかったのか、怖い印象があったのか、自分でもよくわからないんですよね。

ちょうど平野啓一郎さんの『本心』を読んでいた時期で、混同していたのもあります。

そんなとき、SNSの本好きアカウントを見ていたら、「とにかく読んでほしい」という声がたくさんあって。
あらすじもよく知らないまま、「とにかく読んでみよう」と思ったんですよね。

こんな人におすすめ

  • 人が人をどう見て判断するのかを考える小説に興味がある人
  • 相手を一面だけで決めつけることに、引っかかりを感じたことがある人
  • 信じることや疑うことについて考えてみたい人
  • 現実と地続きに感じる題材を扱った物語に関心がある人
  • 読み終えたあとも、簡単には答えが出ないことを考える作品が好きな人


一家殺害事件や死刑判決、逃亡が描かれるので、扱っている題材は重いです。

気軽にすすめやすい作品とは言いにくいけれど、読んでいるうちに、自分が人をどう見ているのかまで考えてしまいました。



『正体』はどんな本?

埼玉で起きた一家三人殺害事件で死刑判決を受けた死刑囚が、脱獄する。

工事現場、スキー場の旅館、新興宗教の説教会、人手不足に悩むグループホーム。

各地で身を隠しながら、捜査の手を逃れて逃亡を続ける。

さまざまな場所で過ごす死刑囚と、そこで出会う人々を描いた小説。

感想|私自身も、他人事ではいられなかった

SNSで「とにかく読んでほしい」とだけすすめられていた理由は、読んでわかった気がします。

何を言ってもネタバレになりそうで、詳しく話しにくいんですよね。

死刑判決を受けた人が逃亡する話と聞いて、私も最初は「逃げてどうするの?さすがに怖い」と思っていました。

しかし実際に読みながら考えていたのは、自分なら
どう人を見るのか、
どんなふうに振る舞いたいのか、
ということ。

こうありたいと思う気持ちはあるのに、いつでもそうできる自信があるわけじゃない。

実際には違う行動をしてしまう可能性のほうが高いのでは?とも思います。

自分にも決して無縁ではないかもしれない現実。

読んでいて、私は泣きました。

フィクションだけど、残酷でリアルすぎた……。

映画も観ました。
原作と映画は、別の作品として触れてほしいと思っています。

文庫のあとがきにあった作者の言葉も心に残っていて、映画を観たあと、知り合いと話したほどでした。

「自分ならどう考えて、どう行動するだろう。」
そんなことを考えた作品として、『ファイア・ドーム』も思い出しました。

噂に流される怖さや、誰かの風よけになろうとする人の存在も考えさせられます。

『ファイア・ドーム』感想|噂の炎は消えない。それでも人は「風よけ」になれる
辻村深月『ファイア・ドーム』の感想をネタバレなしで紹介。噂という炎の怖さ、タイトルから感じた意味、心に残った「風よけになった人」について綴ります。



まとめ|「良かった」と言うのが難しいほど心に残る

どんな人に読んでほしいかを一言で決めるのは、やっぱり難しいです。

扱っている題材を思うと、簡単に「良かった」という言葉を使うことに躊躇いもありますし。

それでも作品の評価を聞かれたら、やっぱり「良かった」と答えると思います。

読み終えたあとも、自分ならどう考えるだろうと、何度も思い返す一冊でした。