前回、「おすすめの本、って聞かれると困る」という話を書いた。
その中で、本って読む人によって受け取り方が違うよね、という話をした。
でも、考えてみたら。
人が違わなくても、読む時期が違うだけで、感じ方ってけっこう変わる。
私自身、再読するとそれをよく感じる。
昔はすごかったのに、今読むと軽い
子どもの頃や、まだ大人としての経験が少なかった頃に読んだ本。
当時は、
「こんな世界があるんだ」
「こんなことを考える人がいるんだ」
と、それだけでかなり刺激的だった。
知らない世界を覗いている感じがした。

でも何年か経って読み返すと、
「あれ?こんなに軽かったっけ」
と思うことがある。
昔は遠かった世界が、
大人になって、
結婚して、
親になって、
少しずつ自分の現実に近づいてきたからなんだと思う。
気づいたら、
物語の世界より、自分の経験値のほうが上がっていた。
なんてこともある。

だからといって、
昔その本を好きだった気持ちがなくなるわけじゃない。
そのときの私には、その本がちゃんと新しかった。
ちゃんと刺激的だった。
ただ、今の私にはもう「知らない世界」ではなくなった。
それだけなんだと思う。
昔は刺さらなかったのに、今は分かる
逆のこともある。
昔読んだときは、
「ふーん」
くらいで通り過ぎた場面。
よく分からなかった登場人物の気持ち。
「なんでそんなことするんだろう」
と思っていた選択。
それが、何年か経ってから読むと、
急に分かることがある。

自分も似たような経験をした。
同じような立場になった。
大人になって、見えるものが増えた。
すると、
「ああ、そういうことだったのか」
って、前は刺さらなかった部分が急に刺さる。
昔は理解できなかった登場人物に、今は妙に共感してしまうこともある。
本は同じなのに。
変わったのは、自分のほうなんだなと思う。
重い話が、いつでもいいとは限らない
今の自分に近い話ほど、強く刺さることもある。
でも、刺されば刺さるほどいいかというと、そうでもない。
分かりすぎるから、重い。
身近すぎるから、苦しい。
今の自分が刺激を感じるくらい現実に近い話だと、
「この先もこんなことばかりなのかな」
なんて、ちょっと気持ちが沈むこともある。

そんなときは、
昔なら「軽いな」と思ったような話がちょうどよかったりする。
全部が全部、激重じゃなくていい。
もちろん、時々は激重も読む。
それはそれで好き。
でも毎回それだったら、さすがに疲れる(笑)
そのときの自分にとって、
重さがちょうどいい本もあれば、軽さがちょうどいい本もある。
同じ言葉でも、拾うところは違う
これは本に限らない。
以前、
「自信がない」
と話したとき、
「自分を信じることができないなら、やめて楽になったほうが幸せだ」
というようなことを言われたことがある。
たぶん、
「無理しなくていい」
という意味だったんだと思う。
でも私は、
「自信って、自分を信じることなんだ」
というところだけを拾った。
そして、
「じゃあ、自分を信じてみよう」
と思った。
結果、
「頑張ってみる」
という方向にいった。

でも、同じ言葉を聞いて、
「自信がないことを続けるのは無駄なんだ」
と受け取る人もいると思う。
言葉は同じでも、
その人がどこを拾うかで意味は変わる。
本の中の言葉も、たぶん同じ。
作中では誰かを貶すために使われている言葉なのに、
なぜか自分の中では、
「そうか、そういう考え方もあるよね」
と、プラスに変わることがある。
物語の中でどういう意味なのかは分かっている。
でも、自分の中では別の意味で残る。
そういう瞬間が、私はけっこう好きだ。
本に救われるって、こういうことなのかもしれない
私は、本に救われたと思ったことがたくさんある。
でも、
「救ってほしい」
と思って本を読んでも、必ず救われるわけじゃない。
むしろ、
「ちょっと気分転換になれば…」
くらいの気持ちで開いた本の中に、
なぜか心に残る言葉がある。
あとから思い返したときに、
「あの言葉があったから少し楽だったな」
と思うこともある。
だから私は、
本が人を救うことはあると思う。
ただ、それは最初から約束されたものではなくて、
読んだ自分が何かを拾った結果なんだと思う。
再読すると、今の自分が見える
昔好きだった本を、今も好きだと思うことはある。
でも、好きな理由まで同じとは限らない。
前は物語そのものに惹かれていたのに、今は別の登場人物の言葉が残る。
前は何とも思わなかった場面が、今は妙に気になる。
逆に、
前はすごく刺激的だったものが、今は穏やかに感じる。
そういう変化を見ると、
再読って、
本をもう一度読むだけじゃないんだなと思う。
昔の自分と、今の自分の違いを見つける時間でもある。
同じ一冊なのに、
読むたびに見えるものが変わる。
それが、再読のおもしろさなのかもしれない。
