――たくさん読む秋も、一冊と一年を過ごす秋も
こんにちは、蝶まめです。
「読書の秋」と聞くと、私はワクワクします。
涼しくなったら、あの本も読みたい。
この本も読みたい。
夏の暑さで少し元気をなくしていた読書欲が、ムクムクと起き上がってくるようです。
「味覚の秋」にワクワクするのと、少し似ているのかもしれません。
果物、きのこ、新米。秋には、おいしいものがたくさんあります。
でも、これが「食欲の秋」になると、私はちょっとげんなりします。
もともと少食なので、おいしいものが増えても、たくさん食べられるわけではありません。「おいしいから、もっと食べなよ」と言われるのも苦手です。
読書も、きっと同じです。
本を読めない秋もある
読書の秋をきっかけに、本を手に取る人が増えるのはうれしいことです。
普段なら、本を読んでいるだけで「気取っている」と思われることもあります。
でも秋になると、世の中全体が少しだけ、本を読むことに寛容になる気がします。
私にとって読書の秋は、本好きを堂々と楽しみやすい季節です。
けれど、読みたいのに読めない人にとっては、少し違って見えるかもしれません。
「読書の秋なのに、私は本を読めていない」
そんなふうに、周りから取り残されたように感じる人もいるでしょう。
私にも、本を読めない時期がありました。
忙しくて本を意識する余裕がなかった時期もあれば、時間ができても、文章が頭に入ってこなかった時期もあります。
そんなとき、私を本の世界へ戻してくれたのは、新しい物語ではなく、昔から好きだった宮沢賢治の『注文の多い料理店』でした。
読書は、いつも知らない世界へ進むことだけではありません。
好きだった本へ帰ることも、私にとっては大切な読書です。
毎年、同じ本へ帰る秋
今の私には、秋になると毎年読み返す本があります。
恒川光太郎さんの『秋の牢獄』です。
作中で繰り返される11月7日が近づくと、今年もこの本を読む季節が来たと思います。
同じ物語なのに、読む年によって心に残るところは少しずつ違います。
本の中では同じ一日が繰り返されているのに、それを読む私は、一年前とは同じではありません。
新しい本と出会うだけでなく、毎年同じ本へ帰っていく。
これも、私にとっての読書の秋です。
一冊と、一年を過ごしてもいい
読書の秋に、一冊の本を手に取る。
普段はあまり本を読まないから、なかなか先へ進まない。
それでも急がず、少しずつ読んでいく。
冬になり、春が来て、夏が過ぎる頃に、その本を読み終える。
そして気づけば、また読書の秋がやってきます。
去年の秋に選んだその本は、ただ読み終えた一冊ではなく、一年を一緒に過ごした相棒になっているかもしれません。
一年に一冊なら、「今年の本」。
季節に一冊なら、「秋の本」「冬の本」。
たくさん読みたい人には、たくさんの本との出会いが待っています。
読書の秋に、決まった読み方はありません。
何冊もの物語を駆け抜ける秋も、一冊の物語と一年を過ごす秋もある。
今年のあなたは、どんなはやさで本を読みますか。
次の秋、あなたの隣にその一冊があったなら、それもきっと、すてきな読書の秋です。
