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『ありか』瀬尾まいこ|涙の先に見つけた、お守りのような一冊

瀬尾まいこ『ありか』の書評アイキャッチ。柔らかな陽光の中、母親と幼い娘が手をつないで歩く後ろ姿。親子の愛情と未来への希望を表現した画像。 晴れ☼

こんにちは、蝶まめです。

今回紹介するのは、瀬尾まいこさんの『ありか』

読書天気:晴れ ☀️
重い題材を扱い、途中では何度も涙があふれた。
読み終えた心に苦しさはなく、希望に満ちた明るさが残る。

図書館で借りた本ですが、読み終えた今、購入して手元に置こうと思っています。

正直、こんなに泣くとは思いませんでした。

登場人物の気持ちに自分の経験や記憶が重なり、何度も涙があふれてしまったのです。

親子の関係、血のつながり、人を大切に思うこと。
そして、自分の人生をどう生きていくのか。

決して軽い題材ではないのに、読後は快晴に近い晴れ。

私にとって、特別な一冊になりました。

こんな人におすすめ

  • 親子や家族の複雑な関係を描いた物語に興味がある人
  • 血縁にとらわれない、人と人とのつながりについて考えたい人
  • 自分らしい生き方や、諦めていた夢と向き合いたい人
  • 重いテーマを扱いながらも、希望を感じられる作品を読みたい人


家族や子どもに対する思いは人それぞれ。

置かれている境遇や過去の経験によって、受け取り方が大きく変わる作品だと思います。

私には深く響きましたが、誰もが同じように感じるとは限りません。



『ありか』はどんな本?

主人公は、5歳の娘・ひかりを育てるシングルマザーの美空。

娘を何より大切に思う一方で、実の母親との関係に悩みを抱えている。

そんな美空とひかりのそばにいるのが、美空の元夫の弟・颯斗だ。

颯斗もまた、周囲には打ち明けられない思いや、過去に諦めた夢を抱えている。

血のつながり、家族という関係、誰かを大切に思う気持ち。

さまざまな事情を抱えた人たちの日常を通して、それぞれにとって大切なものの存在を描いていく物語。

感想|自分の人生と重なった、美空とひかりの時間

親子だからこそ、難しい関係

美空と実の母親の関係は、読んでいて考えさせられるものがありました。

親には感謝している。
だから、理不尽だと感じても簡単には突き放せない。

相手の機嫌を損ねないように、自分が頑張れば何とかなると思ってしまう。

そんな美空の考え方や行動には、私自身と重なる部分がありました。

親子だからといって、互いの気持ちを理解できるとは限りません。

子どもが親を思う気持ちも、親が子どもに向ける愛情も、必ずしも同じ形ではないのでしょう。

美空の境遇が自分とそっくりだったわけではありません。

それでも、彼女がなぜそう考え、行動するのか、理解できる場面がいくつもあったのです。

家族という枠に収まらない、颯斗の優しさ

もう一人、忘れられないのが颯斗です。

美空とひかりを自然に気遣い、子どもを心から大切にする人。


けれど、颯斗自身にも複雑な事情があります。

親に打ち明けられず、実家とは距離を置いて暮らしている。

颯斗の親は、決して悪い親として描かれていません。

だからこそ、かえって打ち明けられない思いがあるのかもしれない。

そんなことも考えました。

また、颯斗とひかりの関係も印象に残っています。

親子ではなく叔父と姪、戸籍上ではすでに他人。
それでも、そこには確かな愛情があるのです。

家族という名前がついているかどうかより、相手をどう思い、どう関わっていくか。

颯斗の存在は、その大切さを感じさせてくれました。

娘の成長と、忘れられないあの頃

今回、私が何度も涙を流したのは、ひかりを思う美空の姿でした。

ちょうどこの作品を読んでいたのが、娘の誕生日前後。

物語の中のひかりは、まだ5歳です。

幼い子どもが怖さや不安を抱えながら、少しずつ目の前の出来事を受け入れていく。

そして、それを見守る親にも、代わってあげられないもどかしさや、言葉にできない不安がある。

美空の気持ちが描かれるたびに、当時の記憶が鮮明によみがえり、涙が止まらなくなりました。

今では成長した娘も、あの頃はまだ小さくて。
大変だったなぁ。かわいかったなぁ。

そんな思い出が、次から次へとあふれてきたのです。


一方、娘は少しずつ親から離れ、自分の世界を広げ始めています。

嬉しいけれど、寂しい。

いずれ反抗期を迎えて衝突することもあるでしょうし、いつかは親元を離れていく日が来るはずです。

だからこそ、ひかりとの日々を過ごす美空に、心の中で何度も声をかけたくなりました。


今しかない時間を、思いきり大切にしてね、と。

子どもが少しずつ成長していく。
その中に親子のつながりを感じられることが、なんだか嬉しかったのです。

自分の娘とのこれまでを振り返りながら、これからの時間についても考える。

私にとって『ありか』は、そんな読書にもなりました。

それぞれが探す「ありか」

読み終えてからも、ずっと考えているのがタイトルの意味です。

正直なところ、まだはっきりとは掴めていません。

それでも、私には登場人物それぞれが持つ、大切な何かの「ありか」を描いているように感じられました。

親子愛、友人愛、他人への思いやり。夢や希望、信頼できる人、自分らしく生きられる場所。

美空には美空の、颯斗には颯斗の、そしてこれから成長していくひかりにも、それぞれの「ありか」があるのでしょう。

それは、物語を読んでいる私たちも同じなのかもしれません。

大切な何かが、どこかにある。

たとえ今は見つけられなくても、その存在を忘れずに、自分から歩き出せるか。

「大丈夫、歩けるよ」

私には、この作品がそんなふうに語りかけてくるように感じられました。


もちろん、これは私自身の解釈です。

諦めていた夢や自分の望む生き方にもう一度向き合おうとする姿には、年齢を重ねた今だからこそ、励まされるものがありました。

まとめ|本棚に置いておきたい、お守りのような一冊

『ありか』は、私にとってお守りのような作品になりました。

これから子育てに悩んだときや、娘の成長が少し寂しくなったとき。
あるいは、自分自身の人生に迷ったとき。

本棚にあるこの一冊が、今の気持ちを思い出すきっかけになってくれる気がします。


以前、娘が生まれる前後に出会った『コウノドリ』という作品も、子育てに悩んだときに立ち戻るための、私にとってのお守りでした。

今度は『ありか』が、そんな存在になりそうです。

読み返すかどうかはわかりません。
それでも、そばに置いておきたい。

一冊の本との出会いが、自分の人生の中で特別な意味を持つこともある。

そんな読書ができたことを、とても嬉しく思っています。