こんにちは、蝶まめです。
今回紹介するのは、鈴木光司さんの『らせん』。
📖 読書天気:霧🌫️
分かったはずなのに、恐怖の輪郭はさらに見えなくなる。
『らせん』は、『リング』の正統な続編です。
前作で描かれた出来事を引き継ぎながら、物語はホラーから医学、そして科学へと大きく姿を変えていきます。
『リング』と同じ怖さを期待すると、少し戸惑うかもしれません。
けれど、説明できないものが怖かった前作に対し、今作では「説明できてしまうこと」が恐ろしい。
分かれば安心できるとは限らない。
そんな不穏さが、静かに広がっていく一冊です。
※『リング』の結末に関わる内容を含むため、未読の方は先に前作を読むことをおすすめします。

こんな人におすすめ
- 『リング』を読み、物語の続きを知りたい人
- ホラーとSF、医学が結びつく作品が好きな人
- 超常現象を理屈から追う物語に惹かれる人
- 前作とは異なる方向へ広がる続編を楽しめる人
- 重い選択や、人間の弱さを描いた小説が好きな人
『リング』のような純粋な恐怖だけを求めると、印象は変わります。
シリーズがホラーという枠を越えていく、その変化も含めて楽しみたい人に向く作品です。
『らせん』はどんな話?
幼い息子を海で亡くし、深い喪失を抱える監察医・安藤。
彼は、大学時代の友人である高山竜司の遺体を解剖することになります。
不可解な死因。
遺体から見つかる、見過ごすことのできない異変。
そして、新聞紙に残された謎の数字。
調査を進める安藤は、やがて前作『リング』で起きた出来事と、その背後にあるものへ近づいていきます。
終わったはずの恐怖は、なぜ再び動き始めたのか。
安藤がたどり着く答えは、呪いという言葉だけでは説明できないものでした。
※これ以上は物語の核心に触れるため書きません。
感想|分かるほど、逃げられなくなる
『リング』とは違う場所から始まる
『リング』では、死の期限に追われながらビデオの謎を解く緊張感が物語を動かしていました。
一方、『らせん』の入口にいるのは監察医です。
遺体を調べ、身体に残された異変を読み取り、起きたことを医学的に考えていく。
前作の恐怖を別の角度から見直すことで、物語の空気は大きく変わります。
同じことを繰り返す続編ではありません。
だからこそ、『リング』で分かったと思っていたことが崩れ、シリーズの世界が一気に広がります。
理屈が恐怖を消してくれない
得体の知れないものには、正体さえ分かれば対処できるような期待があります。
しかし『らせん』では、少しずつ理屈が見えてくるのに、安心できません。
むしろ、偶然だと思いたかった出来事がつながり、逃げ道が塞がれていく。
何が起きているのかを理解するほど、その先にあるものの大きさに気づかされます。
超常的な恐怖を科学へ近づけることで、物語が現実から遠ざかるのではなく、かえって自分たちの世界へ入り込んでくるように感じました。
安藤の喪失と、残酷な選択
この作品を重くしているのは、恐怖の仕組みだけではありません。
安藤は、幼い息子を失った痛みを抱えています。
その喪失があるからこそ、彼の前に示される可能性はあまりにも残酷です。
何を選ぶべきか、理屈では分かっている。
それでも、その選択を「当然」や「仕方がない」の一言で片づけることはできない。
人の弱さにつけ込むように道が示されたとき、自分なら正しい選択ができるのか。
恐怖とは別の意味でも、読んでいて苦しくなる部分でした。
恐怖が「連鎖」に変わっていく
前作で恐ろしかったのは、一本のビデオと、そこに込められた見えない力でした。
『らせん』では、その恐怖が一人ひとりを越え、さらに大きなものへ変わっていきます。
止められるのか。
そもそも、どこからが始まりだったのか。
答えへ近づくほど、新しい疑問が生まれる。
タイトルのとおり、同じ場所を回っているようで、実際には別の段階へ進んでいる。
その感覚が、次作『ループ』へつながっていきます。
まとめ|恐怖は終わらず、形を変える
『らせん』は、『リング』の恐怖をそのまま繰り返す続編ではありません。
見えない呪いは医学や科学と結びつき、より広く、より逃れにくいものへ姿を変えていきます。
前作とは雰囲気が違うため、戸惑う人もいるでしょう。
それでも、この変化こそが私の思う「鈴木ワールド」です。
ホラーから始まった物語が、どこまで広がっていくのか。
その答えを確かめたくなったら、次は『ループ』へ。
『リング』で抱いた恐怖さえ、まったく違って見えるかもしれません。

