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『恋とか愛とかやさしさなら』感想|許すことは愛なのか。「本当のやさしさ」を考える

曇り

こんにちは、蝶まめです。

今回紹介するのは、一穂ミチさんの『恋とか愛とかやさしさなら』。

📖 読書天気:曇り☁️
明るくはないけれど、人の心を静かに見つめたくなる一冊。

書店でまず惹かれたのは、美しい装丁とやわらかなタイトルでした。

「恋」とか「愛」とか「やさしさ」とか。

なんとなく温かな物語を想像して手に取ったのに、あらすじを読んで、一度は棚に戻した本でもあります。

物語の始まりは、

プロポーズされた翌日、恋人が盗撮で捕まる。

想像していた「やさしさ」とは、まったく違いました。

それでも読み終わったあと、いちばん考えていたのはやっぱり、

本当のやさしさって、何なんだろう。

ということでした。

こんな人におすすめ

  • 甘いだけではない恋愛小説を読みたい人
  • 人の感情をじっくり描く作品が好きな人
  • 読み終わったあとも考え続ける小説が好きな人
  • 「信じる」「許す」「愛する」ことについて考えてみたい人
  • 一穂ミチさんの、人間の複雑さを描く作品が好きな人

決して気持ちよく読める作品ではありません。

でも、「自分だったらどうする?」と考えずにはいられない一冊です。



『恋とか愛とかやさしさなら』はどんな話?

主人公の新夏はカメラマン。

5年間付き合ってきた恋人・啓久からプロポーズされ、幸せの真っただ中にいました。

ところが、その翌日。

啓久が通勤中に女子高生を盗撮し、捕まったことを知らされます。

「二度としない」と言う啓久。

昨日まで結婚しようと思っていた人。

長い時間を一緒に過ごして、たくさんの思い出を作って、信じてきた人。

その人が、自分には理解できない行為をした。

新夏は、彼をもう一度信じることができるのか。

許すとは何なのか。

そして、それでも相手を愛していると言えるのか。

そんな簡単には答えの出ない問いを突きつけてくる物語です。

感想|自分だったら、どうするだろう

読んでいる間、何度も考えました。

自分だったらどうするだろう…。

昨日まで大切だった人が、一瞬で「生理的に無理」と感じる相手になってしまうこと。

これまでのきれいな思い出を全部吹き飛ばしてしまうほど、受け入れられない行為。

それは、どのくらいあるんだろう。

もちろん、それまで過ごしてきた時間が消えるわけではありません。

優しかったこと。

楽しかったこと。

自分を大切にしてくれたこと。

全部嘘だった、と簡単に片づけることもできない。

だからこそ苦しい。

好きだった。

大切だった。

でも、受け入れられない。

その感情は矛盾しているようで、どちらも本当なのだと思います。

「性加害」に大も小もない

盗撮という行為を、どこまで重大なこととして考えるのか。

人によって受け止め方には差があるのかもしれません。

でも私は、

「性加害」に大も小もない。

と感じました。

「これくらいなら」

「一度だけなら」

「本人も反省しているなら」

そんな言葉で小さくしていいものなのか。

頭では誰かを許そうと思えても、自分のもっと深いところが拒絶することもあります。

表面の自分は、

「一度の間違いで全部を否定するの?」

と問いかける。

でも内側の自分は、

「もう無理だ」

と言っている。

逆に、その内側の声に従えば、

「本当にそれでいいの?」

と今度は表面の自分が責めてくる。

どちらを選んでも、簡単にはすっきりできない。

その苦しさが、この作品にはずっとありました。

許すことは、愛することなのか

誰かを愛しているなら、その人の過ちを許すべきなのか。

逆に、許せないなら、それまでの愛は偽物だったのか。

私は、そうではないと思います。

人を大切にしたい気持ちと、

自分を守りたい気持ち。

その二つは、同時に存在していい。

相手の気持ちを理解しようとすることと、自分が傷つかないために離れることも、両立するのかもしれません。

「優しくすること」が、必ずしも相手の望む選択をすることではない。

そして、自分を犠牲にすることが愛でもない。

『恋とか愛とかやさしさなら』というタイトルは、読み終わったあとになるほど難しく感じました。

恋なら。

愛なら。

やさしさなら。

どうするのが正解なのか。

でも、たぶんそこには、誰にでも当てはまる一つの答えなんてありません。

一穂ミチさんが描く、人の内側

一穂ミチさんの文章は、静かでやわらかい。

それなのに、その中にいる人間の弱さや狡さ、言葉にしにくい感情は、かなり剥き出しです。

誰か一人を完全な悪者にして終わらせてくれない。

だから読みながら、

「こっちが正しい」

と簡単に決められません。

そしてそれは、先に読んだ『ツミデミック』にも感じたことでした。

人は、外から見えている部分だけではわからない。

だからこそ、怖い。

でも同時に、だから人間を描く小説は面白いんだと思います。

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まとめ|「本当のやさしさ」に正解はあるのか

『恋とか愛とかやさしさなら』は、恋人が盗撮で捕まるという出来事から始まる恋愛小説です。

でも読み終わってみると、単に「恋人を許せるか」という話ではありませんでした。

信じるとは何か。

許すとは何か。

愛するとは何か。

そして、自分にも相手にも「やさしくする」とはどういうことなのか。

考えれば考えるほど、答えは出ません。

だからこそ、読了後もしばらく心に残りました。

誰かを大切にしたい。

でも、自分の気持ちも大切にしたい。

その間で揺れること自体が、とても人間らしいのかもしれません。

タイトルのやわらかさとは裏腹に、簡単には答えの出ない問いを残す一冊。

「あなたならどうする?」

読み終わったあと、誰かと話したくなる作品です。